近年、EC市場を筆頭にマーケティング戦略として注目されている「グロースマーケティング」をご存知でしょうか。
グロースマーケティングとは、顧客基盤や市場シェアを広げ、成長を促進するためのマーケティング戦略の一つです。
競争が激しく、顧客ニーズも年々変化するEC市場においては必須のマーケティング戦略と言えるでしょう。
しかし、効果的なグロースマーケティングを実施するためには、解決しなくてはならない課題や成熟度に応じた施策の手順があります。
本コラムでは、グロースマーケティングの概要と効果、課題と解決方法、具体的なステップと実施例、成功事例までをまとめて解説します。
自社の顧客基盤や市場シェアを拡大したい方、ECサイトの運用担当者をはじめ、グロースマーケティングに関心がある方は、ぜひ参考にしてみてください。
グロースマーケティングとは、企業や組織が持つ顧客基盤や市場シェアを拡大し、持続的な成長を促進するためのマーケティング戦略の一つです。
従来のマーケティング戦略が主に新規顧客の獲得にフォーカスするのに対し、グロースマーケティングは既存顧客の維持や満足度向上、顧客の生涯価値(LTV)の最大化にもフォーカスします。
グロースマーケティングでは、顧客が購買意欲を高め、リピーターやブランドのアンバサダーになるようなプロセスを構築することが重要です。そのため、積極的な顧客エンゲージメント、顧客との関係構築、顧客ニーズの把握と対応、そして製品やサービスの改善などが重要な要素となります。
日本においても、グロースマーケティングの注目度は高まっています。これは、市場競争の激化や消費者ニーズの多様化が進むなかで、企業が単なる顧客獲得だけでなく、既存顧客の維持や満足度向上に重点を置く必要があるためです。
日本をはじめ、現在のビジネス環境では、顧客が製品やサービスに対して抱く愛着や信頼(顧客ロイヤリティ)の向上が重要です。
顧客が製品やサービスに満足し、良い体験を得ることができれば、その顧客は長期間にわたって企業を支持し、リピート購入を行う可能性が高まります。顧客による口コミや推薦も、新規顧客の獲得に繋がります。
さらに、日本の市場ではブランドイメージが重視される傾向があります。良好な顧客関係を構築し、信頼を築くことで、企業のブランド価値や信頼性を高めることができるでしょう。これは、競合他社との差別化や市場でのポジショニングに役立ちます。
また、消費者はインターネットやソーシャルメディアを活用し、商品やサービスに関する情報を収集します。したがって、デジタルマーケティングや顧客エンゲージメントの強化は、企業が市場で競争力を維持し、成長するためには不可欠です。
総じて、グロースマーケティングは、日本においても企業が持続的な成長を達成するために欠かせない戦略です。企業は顧客中心のアプローチを取り入れ、顧客との信頼関係を築きながら、市場での成功を目指すことが求められます。
グロースマーケティングが重要視される市場の筆頭として挙げられるのが、EC市場です。
ここでは、国内EC市場の現状を踏まえて、グロースマーケティングの重要性を解説します。
コロナ禍を経てEC市場は大きく成長しており、国内のEC化率は平均9%に達しています。
※出典:物販系分野のBtoC-EC市場規模及びEC化率の経年推移(市場規模の単位:億円) より
また、国内EC市場の成長に期待するがゆえに、各企業が投資を行う意欲もさらに高い状況が続いています。
※出典: 2021年12月1日Future Shop社調査
「EC活用の実態とアフターコロナの展望についてのアンケート」より
EC市場における売上向上への期待が高まる一方で、個人情報保護法関連、CPM高騰、Cookie規制などECでの新規獲得に対する逆風は強くなっています。
※出典:アライドアーキテクツ「EC事業のマーケティングの実態調査」2022年より
人口動態・個人情報関連対応・ROI悪化等を踏まえると、新規獲得中心のEC成長は限界を迎えていると考えられます。
具体的には、以下が挙げられます
上記のような状況に対し、EC市場に参画する企業は、顧客データに基づくフルファネルでのマーケティングの実践が求められます。
具体的には、以下のような顧客体験に沿ったマーケティングです。
つまり、国内EC市場は、短期目線の新規獲得型マーケティングから、持続的な成長・顧客の生涯価値(LTV)向上を目指すグロースマーケティングへのシフトが求められていると言えるでしょう。
※株式会社ビービット「グロース編総まとめ」セミナーより抜粋
実際にLTV向上を目指すことで、どの程度売上向上に繋がるのか、試算してみましょう。
当社がご支援しているとある企業様の場合、購入者割合における複数回購入者は全体の20%で、残り80%は1回のみの購入者でした。
しかし全体売上における複数回購入者からの売上は、全体の47%にまで達します。
売上の半分は複数回購入者からであり、2回目、3回目購入顧客へのアプローチを行うことで、EC売上のさらなる向上が期待できます。
※株式会社ビービット「グロース編総まとめ」セミナーより抜粋
ECにおけるグロースマーケティングの実践に向けて、売上の方程式を変更し、伸ばすべきKPIも変更することが求められます。
具体的に表すと、以下のような変更です。
グロースマーケティングは顧客の生涯価値(LTV)を持続的に創出するために、分析→デプロイ→モニタというステップを回し続けることも特長です。
図に表すと、以下のようになります。
※株式会社ビービット「グロース編総まとめ」セミナーより抜粋
このような「LTV型」ビジネスにおいては、購入以降の使用評価→問題解決→エンゲージまでを見据えたグロースファネルを重視することが求められます。
当社のご支援実績では、大型プロモーション時期に非アクティブ顧客の引き上げを実施。結果として2%の非アクティブ顧客掘り起こしに成功し、再購入に至りました。
具体的には、大型プロモーションシーズン期間を利用し、非アクティブ会員にむけたセグメント別のコミュニケーション(プッシュ通知等)を展開。魅力的なディスカウントを提供する事で再購買を促したのです。
仮に、会員数約50万件、年商約12億、平均成長率110%のECサイトで25%の非アクティブ顧客の2%を引き上げた場合の想定効果は、売上高およそ30%上昇、年平均成長率も110%から116%へと引き上げられます。
※株式会社ビービット「グロース編総まとめ」セミナーより抜粋
グロースマーケティングの概要や重要性、その効果については分かったものの、実践するとなると難しいのが現状…という声もよく耳にします。
実際にEC事業者からは以下のようなお話をお伺いします。
上記のような現状により、なかなかグロースマーケティング実践に踏み切れないのです。その背景には、主に以下2点の原因が挙げられるでしょう。
ここでは、このような現状を打破してグロースマーケティングを実践する方法について解説していきます。
グロースマーケティングを実施する上で最も深刻な課題は、人材不足です。
アライドアーキテクツ株式会社が2022年に実施した「EC事業のマーケティングの実態調査」によると、対象の43.6%が、EC事業を取り巻く市場の変化により起きているネガティブな影響として、デジタル人材の不足を挙げています。
調査において2番目に多かった「顧客満足度の低下」が36.6%であったことを考えると、より多くの企業が自社内に課題を抱えていることになります。
※出典:アライドアーキテクツ「EC事業のマーケティングの実態調査」2022年より
人材不足に加え、グロースマーケティングを実施するための知見が少ないという課題もあります。
マーケティングはやることが数多くあるなかで、新規顧客の獲得に比べて既存顧客に対する知見は溜まりづらいのが実情です。
また、既存顧客対応は企業によって内容が異なるため、自社のマーケティングにおいて参考になる他社事例も少なく、どこから手をつければいいのか分からないままになってしまうこともあるでしょう。
こうした状況のなかで、知見を得てグロースマーケティングを実施・成功に導くまでの道のりを長く感じてしまう企業も少なくありません。
現状からの脱却には、「ステップ・バイ・ステップ」と「テクノロジー活用」という2つのキーワードが重要です。
それぞれ解説していきます。
大きな絵を描いて落とすビッグバンアプローチは理想的ではあるものの、実施する負荷も高くなるでしょう。
そのため、現在の状況を踏まえて少しずつステップを上っていくモジュールアプローチが望ましいと言えます。
モジュールアプローチの場合も、事前に全体像を描き、把握しておくことで方向性を誤ることも少なくなります。
デジタル人材の不足が課題であり、かつ人的リソースが少ないなかでECを運用するには、徹底的にテクノロジーの力を借りることが重要です。
セグメント配信やコンテンツ作成等は、最新のテクノロジーを用いることで大幅に省力化が可能です。
人がやるべき部分とテクノロジーに任せる部分をしっかり切り分けることで、人材不足という課題に躓くことなくグロースマーケティングを実施できるでしょう。
グロースマーケティングには、その成熟度に応じて4つの段階があります。
無理に高いレベルを求めようとせず、自社の状況・リソースに合ったレベルから段階的に進化させることが重要です。
※株式会社ビービット「グロース編総まとめ」セミナーより抜粋
ここでは、4ステップについて解説していきます。
自社の現状がどのステップにあたるのか、ぜひ参考にしてみてください。
成熟度レベル1のステップは、「全体配信」です。
獲得後の顧客コミュニケーションが、メール全体配信や一律WEBポップアップのみの状態を指します。
顧客体験の例としては、自分に関係のないメールが多く来るが、たまに気になるメールが来るという状態です。
この成熟度に達するためには、以下の課題をクリアしなくてはなりません。
課題をクリアするためには、メール配信ツールの活用が有効でしょう。
成熟度レベル2のステップは、「デモグラターゲティング」と「鉄板施策」です。
デモグラターゲティングは、顧客購買後に顧客カテゴリごとにセグメント配信、ただしコンテンツは一律である状態を指します。
鉄板施策は、デモグラターゲティングに加えて、カゴ落ち・誕生日クーポン・ポイントリマインド等、成果向上が確実視される施策を実施している状態です。
顧客体験の例としては、気になるメールが来ることが多いので確認するが、オファー内容があまり魅力的ではないのでサイトに訪問するケースは少ないという状態です。
この成熟度に達するためには、以下の課題をクリアしなくてはなりません。
課題をクリアするためには、CDP、BIの活用が有効でしょう。
CDPを用いて、まずは新規・既存・アクティブ・休眠でセグメントを作成します。
そして、鉄板施策3選については、後ほど詳しく説明します。
成熟度レベル3のステップは、「購買履歴ターゲティング」と「チャネル拡大」です。
購買履歴ターゲティングは、各ユーザおよびECサイト全体の購買履歴に基づき、セグメント配信を実施していることを指します。
チャネル拡大は、メールだけでなく、LINEやアプリプッシュ通知、ウェブポップアップ等のチャネルでもコミュニケーションを実施している状態です。
顧客体験の例としては、気になるメールが来てオファー内容も魅力的なのでサイトに訪問してみるものの、実際には購買しないという状態です。
この成熟度に達するためには、以下の課題をクリアしなくてはなりません。
課題をクリアするためには、CDP、BI、MAの活用が有効でしょう。
まずは初回購入商品・2回目購入商品に絞ってレコメンドを実施します。
その後、MAでチャネルの一元管理をするのがポイントです。
成熟度レベル4のステップは、「行動履歴ターゲティング」と「コンテンツパーソナライズ」です。
行動履歴ターゲティングは、購買履歴+行動履歴に基づき、顧客状況・状態に応じたセグメント配信を実施していることを指します。
コンテンツパーソナライズは、コンテンツも購買履歴・行動履歴に基づき、パーソナライズして配信を実施している状態です。
顧客体験の例としては、気になるメールが来てオファー内容も魅力的でサイトに訪問したところ、ちょうど自分に興味のある商品がポップアップでレコメンドされたので購買に至るという状態です。
この成熟度に達するためには、以下の課題をクリアしなくてはなりません。
課題をクリアするためには、CDP、BI、AIの活用が有効でしょう。
最初は商品閲覧情報に基づいてセグメントを作成します。
そして、コンテンツはレコメンドエンジンを用いて自動作成するのがポイントです。
ここでは、実際にグロースマーケティングを実施し、EC売上の向上を果たした成功事例をご紹介します。
六月初一は、従来のマーケティング手法を行っていたものの、メッセージ開封率がわずか10%という課題を持っていました。
そこで顧客一人ひとりに適した施策を実行したいという想いから、グロースマーケティングを実施。
具体的には、顧客を4分類のセグメントに分け、それぞれの顧客ごとに体験を設計しました。
セグメントA:お試し購入セグメント
ユーザの特徴:購入商品に偏りなく、数量は1個多い
設計した体験:送料無料キャンペーン配信し、購買意欲と顧客単価の引き上げ
セグメントB:新商品好きセグメント
ユーザの特徴:キャンペーンごとに購入商品が変化
設計した体験:新商品とコラボ商品キャンペーンを配信し、購買意欲の引き上げ
セグメントC-1:会社ギフトセグメント
ユーザの特徴:クラシック味のギフトボックス購入、法人番号登録あり
設計した体験:新規客にはブランドメッセージ、注力リピート客にはギフト用や団体購入向け割引き
セグメントC-2:共同購入セグメント
ユーザの特徴:購入商品偏りなくギフトボックス選択なし
設計した体験:一定金額以上の購入に対して、キャンペーン数量限定や店舗別限定などのコンテンツを顧客ごとにレコメンド
結果として以下のような成果を挙げています。
詳しくは事例ページもご覧ください。
事例ページ:六月初一
当社の事例一覧はこちら
ここまでグロースマーケティングの概要、重要性、効果、成功事例などを解説してきました。
本コラムのポイントを改めて以下にまとめます。
本コラムを参考に、自社に合ったグロースマーケティングを実施し、EC売上の向上を目指しましょう。
当社が提供するOmniSegmentは、高度なセグメンテーションと精度の高い顧客コミュニケーションを実現する、CDP・BI・MA/AI一体型のECサイトに最適化されたグロースマーケティングツールです。
日々の業務に忙しい小売/EC企業の担当者様でも簡単に使えるよう、シナリオ設計、メール作成、売上管理、会員ステータス分析などのUIを作り込んでいます。
OmniSegmentではAIを有効活用し、CRMツール活用における利用者の工数を削減しています。
商品レコメンドや画像作成によりクリエイティブ作成を、スマート配信やオーディエンススコアによりシナリオ設定を省力化しています。
また、商品に対して複数の属性を付与させることができます。
ユーザが各商品を閲覧したり購入したりすることで、付与された属性からユーザの趣味嗜好を判断しセグメント配信の条件にすることが可能です。
導入から運用にあたってはコンサルタントが伴走し、自社に最適な設定・更新〜データ分析〜施策設計・実施までを実行いたします。
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